【承DIO】一つの星
※ジョナ←ディオ前提の承→DIO
※甘い要素はゼロです。ふざけんな!って方はUターン推奨
そんな文章でよければスクロールでどうぞ↓
ジョジョ。
愛しい我が兄弟の名を賛美歌のように口ずさむ。満たされたグラスの紅色が瞬くと、背後で承太郎の唸るような、低く低く、だがハッキリとした言葉の一文字一文字が鼓膜に伝わってくる。唇が開閉するのを、ただぼんやりと。本当にぼんやりと、耳に入る言葉と共に、グラスに映った承太郎を瞳へと流し入れた。
「お前は……DIO、お前はどうして、おれじゃあないんだ」
たわごとだ。奴がわたしに語りかけるセリフは、何の面白みもない。
手に持っていたグラスに満たされる血液よりも、全く味気のない…同じ人物のものというに、こうにも味が違うとは。本当に、たわ言。
酷いジョークを聞いているほうがマシ、というとかなり大袈裟だが、そのくらいに。せめてもの感想を言うなら「ああ、またか」という感じ。口からこぼれ出た溜め息を、ゆらぎ映る承太郎へと向けた。
「何故?どうして?何度もその答えを言ったことだろう………わたしは貴様を選ぶとか選ばないとか、そういう感情は持ち合わせていない。貴様はジョジョとは違うのだ。格段と違う。貴様はジョジョじゃあないのだ…空条承太郎。わたしにとって、それだけの存在であるということだと」
正直、わたしはもう飽き飽きしていた。奴は毎回同じたわ言を吐き、わたしがたわ言に対する返事はいつだってこうだ。口うるさくて仕方ない。いっそ奴を殺してしまおうか?なんて思ってもみたが、やはりこいつの血はそこらの若い女の血よりもよく馴染むし、暇つぶし程度のオモチャというだけなのだから、まあ、今のうちだけだろう。可愛いものだろうともう辛抱している。だからこいつは今生きている。いや、生かされているのだ、わたしに。
そうして承太郎はグリーンの目を悲しみの色で染め、やはりわたしにこう言った。どうしようもないような、酷い妄言をわたしに語りかけるのだ。
「いいや同じだ。髪の色だってこの瞳だって、背丈も星型のアザも、全部全部全部みんなジョナサンと同じだ。それなのに何故DIO、お前は何故おれをジョナサンじゃあないと言うんだ?どうして?おれはジョナサンと同じ血で、ジョナサンと同じ色で、なのにどうしてなんだDIO。何でおれを見てくれないんだ」
「くどい。同じことを何回も言わせるというのは無駄なことだ。わたしは一番”無駄”が嫌いということは分かっているだろう。貴様はこのDIOにとっての無駄でありたいのか?」
突然、バキリ、と鈍い音がした。わたしがその音につられ背を振り返る頃には、すでに承太郎が真後ろに立っていて、しっかりと着けていたはずの手かせの鎖はちぎれていた。承太郎の目を覗くと、悲しみにも怒りにも、はたまた憎しみにもおびていない、ただずっと暗い深緑のような、ダークグリーンにでさえ見える色になり。
奴のさっきのような負の感情の色は幾度となく見たことがあるが、こんなにも暗い色は初めて見る。承太郎が割れた鎖をジャラリと一つ鳴らせば、まさに精一杯と、わたしを離すまいという感じで抱きしめてきた。その様を見て、初めて承太郎に興味が湧いた。ほんの少し、こいつの体温の生ぬるさが、暗い瞳が、ツヤのある頭髪や、声音や……
面白く、滑稽に思えて。
やっと壊れたオモチャは、叩いて直っただろうかと。…いや、更に壊れた一方かもしれないが。
薄く尊重の意で微笑むと、わたしは無意識のうち唇を開けていた。
「承太郎。空条承太郎、ジョジョの…ジョナサンの出来損ないよ。せめてわたしを満足に楽しませてみろ」
白魚のような手は、承太郎の黒く霞んだ髪を優しく撫で。
落ちたグラスの割れた旋律が合図に、二人が深くベッドに沈みこんだ。
オチない。
この後は言わずもがなオラオラ(意味深)してると思います